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目次はじめに T.何故今永く愛される建物か U.永く愛されるには V.永く愛されるために W.永く愛される建物を作る為に提言) X.100年後の街並み Y.200年住宅を注文する エピソード   トピックス『ニューアンドクラフツ』 トピックス『建設環境コーディネーター』 トピックス 『土地問題と永く愛される建物』 トピックス『NPOと永く愛される建物』 トピックス『日本民家に学び直す』 永く愛される建物 まとめ」  

トピックス

建設環境コーディネーターの課題

 前出の建設環境コーディネーターという新しい職能を紹介したが、もう少し詳しくこれについて述べる。20世紀が環境破壊の世紀であったことはこれまでも述べてきた。21世紀は待ったなしの環境保護の世紀に変えていかなければならない。そして、20世紀の環境破壊の最大の貢献者が建設産業であった。しかし皮肉な事に21世紀が環境保護の世紀であるとして、環境保護の最大の担い手も又建設産業なのである。それほど、建設と環境が密接な関係をもっているという事である。21世紀の建設行為は環境に対する配慮なくしてありえない。この様な認識に立てば、当然建設と環境の双方に明るい技術者が必要である事は理解できる。しかし、建設分野はこれまでどちらかというと環境問題に疎く、環境破壊側に組していた技術者が多い。認識としては自然とは戦うものであるという考えであった。したがって、今現在建設環境コーディネーターなる人物がいるわけではない。これから早急に育てる必要がある。建設環境コーディネーターの出現によって初めて21世紀の建設を始める事が出来るという感じである。田中康夫長野県知事が脱ダム宣言をして話題になっているが、あれこそ建設環境コーディネ―ターの判断を必要とするケースである。ダム建設の是非の判断は高度な環境倫理の篩にかけてやるものであり、経済論や単なる技術論では出来ない。
 又これからの建設行為は社会の中で、確りとした合意を取り付けなくてはならない。その様な役割も当然期待される事になる。コーディネーターの名前の所以でもある。そして、建設環境コーディネーターは、建設に関与する多くの人をまとめる力を必要とする.即ち、強力なリーダーシップまで求められるのである。この様な立場に立つ人の最も重要な素質は人間性であり信頼感である。文字通り(信無ければ立たず)である。言い換えれば建設環境コーディネーターは高い倫理観を持つ必要がある。技術者としての倫理観と場合によっては経営倫理も要求される事もある。そしてそれだけの要素が整って初めて消費者である発注者に有益なアドバイスが出来、そのアドバイスを受け入れてもらう事が出来る。全てに公開の原則と十分なアカウンタビリティーを必要とする。プロジェクトの推進の場合も、変更の場合も、中止の場合もである。建設環境コーディネーターは施主の代理人としてプロジェクトを推進するばかりではなく、場合によっては、環境対策上プロジェクトぬ変更や中止を勧告する事もあるからである。勿論永い目で見た発注者の利益になる事は言うまでも無い。真の意味でのクライアントの利益を守る事になるよう行動するのが建設環境コーディネ―ターの役割である。その様な意味で建設環境コーディネーターはLCC(ライフサイクルコスト)に高い関心を持ち、その事に通じていなければならない。当然、建物は出来るだけ永く使う事に強い関心がある。永く愛される建物作りである。
   我々研究会は、今後、この建設環境コーディネ―タ−の育成の為の研究を続けていくつもりである。それまでは建設環境コーディネーターという職能を我々研究会の会員でまとめておき、研究会としてコーディネーターの役割を少しでも実践していこうとしている。