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目次 はじめに T.何故今永く愛される建物か U.永く愛されるには V.永く愛されるために W.永く愛される建物を作る為に提言) X.100年後の街並み Y.200年住宅を注文するエピソード   トピックス『ニューアンドクラフツ』 トピックス『建設環境コーディネーター』 トピックス 『土地問題と永く愛される建物』 トピックス『NPOと永く愛される建物』トピックス『日本民家に学び直す』 永く愛される建物 まとめ」  

命を繋ぐ夢の200年住宅

はじめに

 21世紀は20世紀に続く世紀である。22世紀は21世紀に続く世紀である。この事を疑う人はいないであろう。しかしこの事はいまや但し書きが必要になっているといったら驚かれるであろうか。この世紀という概念は人間社会のものであって他の動植物には何ら関係がない。もうお分かりと思うが,22世紀に現在の人間が存在しえているという保証はどこにもないのである。人類が絶滅している可能性だってあるが,より高い可能性は、人類に環境の激変によって何らかの変化が生じて遺伝子的に21世紀初頭の人類とは異なった生物的要素をもった子孫になっている事である。勿論進化というプロセスで人類はこれまでも変化してきたからそんなに驚く事ではないのかもしれないが,今色々報告されている事柄のスピードが即ち変化のスピードがとてつもなく速いのである。そして人類以外の他の生物種においては絶滅の危機は、危機ではなく全くの現実であり何と毎日それも13分間に1種の割合で起こっている事なのである。これまでの種の絶滅のスピードが年間1種であり、それに比べて比較の対象にならないほどのスピードである.。その原因が人間というただ1種の生物によってもたらされた事は紛れもない事実である。そして人類は今日までその事実に目を瞑り人間は万物の霊長であると嘯き、ある国の首相は人の命は地球より重いといったというのである。勿論生命の大切さを表現した言葉であるが人間の思い上がりがつい出てしまったといえるのではないであろうか。このような環境変化の状況が発生して200年、このままの状態が後100年続けられたら人類の絶滅はともかく生物種の変化が我々の生活を変えてしまう可能性はかなり高いといわざるを得ない。ある人は科学技術がこの危機を救ってくれると信じているかもしれないが、この状況を作り出した張本人が科学技術なのである。そしてこれまでの変化は非可逆性であることを言い添えなくてはいけないであろう。それでもこの状況を含めて神のみ技であり変化は予定の道筋であるというのならそれもよいのかも知れない。又は、お釈迦様の手のひらの内と考える人もいるかもしれない。この本は、現在の状況をブレーキの壊れたトロッコ列車と考える人、自分たちの力でハンドブレーキをかけてみようと思う人に読んで頂こうと思って書いたものである。
   ある調査で社会人に現代文明が何時まで続いて欲しいか聞いたところ、孫の世代までというのが最も多かった。即ち顔の見える世代までという事である。年数にして70年か80年の事しか考えられないのが現代人である。それに比べてアメリカンインディアンは7世代あとの人々に思いを馳せて全てを決するという。現代文明の中の生活が如何に想像力をなくさせるものであるかという一つの証左ではないであろうか。本のタイトルを夢の200年住宅としたのは読者にも豊かな想像力を発揮してもらう為であり、その想像力を現在の危機回避のために働かせてもらいたいと考えるからである。21世紀は始まったばかりでありどんな世紀にするかはまだ我々の手の中にある。200年住宅というテーマを足がかりに22世紀を無事迎える為の準備をしようではないか。これが執筆者全員からのメッセージである。
  それともう一つのメッセージがある。それは現代社会の抱える問題を建設という行為を通じて考え直してみようということである。市場経済、高度情報社会、グローバルスタンダード、色々なキーワードが身に降りかかってくるが、それぞれが本当に意味するところ、我々の生活にどのように関わってくるのか。特に建設分野にどのような意味があるのか出来れば少しでも手がかりが得られたら。そしてその手がかりを基に、現代社会に対して、軌道修正を求めていけたらと考えている。多発する少年犯罪、さまざまな社会問題、経済問題も、いろいろな部分で建設行為と絡み合っている事は間違いない。その中の建設という太い糸を手繰り寄せ解きほぐす事でそれらの複雑な問題も解決の糸口となるのではないか。我々の役目は、読者にも一緒に考えて頂く機会をつくることと、一部の資料提供ではないかと考えている。命を繋ぐとしたのは、世代間の縦の繋がりが主であるが、同時に今を生きる我々の世代の中での横の繋がりをも視野に入れてのことである。
    そして最後のメッセージは夢である。夢は夢であって現実ではない.しかし夢を見る事になんの価値もないとはいえない。正しい夢は未来への羅針盤である。まず、夢を見る事から出発する。何が正しい夢かは誰もわからないが、大勢の人間が英知を絞って抱く夢、それを正しいとしなかったら他に方法はないであろう。では一緒に夢を描き、そして行動しよう。我々自身のために、そして遥かな子孫のために。