目次はじめに T.何故今永く愛される建物か U.永く愛されるには V.永く愛されるために W.永く愛される建物を作る為に(提言) X.100年後の街並み Y.200年住宅を注文する エピソード
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『土地問題と永く愛される建物』
土地政策が永く愛される建物作りに大きな影響を持つことは重ねて言うまでもない。土地問題こそ永く愛される建物作りの基礎になる部分であり、最初にどっしりと固められていなければならない部分である。その時の経済の状況如何によってたびたび変えられるのは、永く愛される建物にとって百害在って一利なしである。土地の私有権を今更否定は出来ないが、実質的には土地の利用権に近い考え方に変えていかないと本当の環境問題は解決できない。土地の絶対的私有権を前提にすると、人間の都合が100%最優先になり、他の動植物の生存権が犯される。他の生物種の生存権など認めないという人があるかもしれないが、それは回りまわって人間の生存権を認めないのと同じことになる。他の生物に配慮する為には、我々の生活は結局は自然に支えられているという事を認識しないといけない。全ての人類の生活物資、手段を人工物にそれも永遠に依存する事は不可能である。
この様な前提に立って、土地の利用の在り方を考えると、これまでが如何に人間中心であったかが分かる。その中でも土地利用の方針や制度を決めてきた政治の責任は大きい。
例えば税制について考えてみると、市街化区域内の農地の宅地並み課税制度などは開発を促進し都市化を促した。又、相続税が、ミニ開発を促進し、農地の切り売りを促している事も周知の事実であるが一向に改善されない。その一方で、開発された土地の上に建てられた建物に対する税制は、減価償却に関する省令などにより、建物の状態にはお構いなしにある一定の額が損金参入され税金が安くなる仕組みになっており、法定耐用年数のきた建物はまだ使えても建て替えたほうが節税できて有利になるなど、建物を永く使わないほうに税制が誘導している事になる。例えば固定資産の減価償却を一年損金参入を認めないと仮定すると約17兆円の税収の増加に繋がるという事である。消費税の比ではない。(消費は美徳である)という時代の、又生産者側の論理にあわせた税制をこの辺で見直さないと大変な事になるかもしれない。土地政策の基本に、土地は人間だけのものではない、人間以外のものとの共存の場でありその共存のあり方としてはある程度棲み分け的な考え方をする必要があるとの認識を据えなくてはならない。永く愛される建物は棲み分けた人間社会の中の出来事でしかない。そして物を大切に永く使わせる為の税制に切り替える必要がある。そのためには、食料品を除いた物品にかける消費税を上げる事も視野に入れるべきかもしれない。もしくは減価償却の停止と永く使う為のメンテナンスに対する補助とか、方向転換のギヤを入れ替えるべきである。