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目次はじめに T.何故今永く愛される建物か U.永く愛されるには V.永く愛されるために W.永く愛される建物を作る為に提言) X.100年後の街並み Y.200年住宅を注文する エピソード   トピックス『ニューアンドクラフツ』 トピックス『建設環境コーディネーター』 トピックス 『土地問題と永く愛される建物』 トピックス『NPOと永く愛される建物』 トピックス『日本民家に学び直す』 永く愛される建物 まとめ」  

トピックス 

  NPOと永く愛される建物

  永く愛される建物を作り出し、街並みを100年後に向かって整えていくには様々な試みと、多くの人の汗と努力が必要である。しかし何と言ってもこの社会革命といっても良い変化を実際のものにしていくエネルギーは国民一人一人からしか出てこない。そしてそのエネルギーを噴出させるものが価値観の転換である。特に環境問題と社会問題に対する危機感のもち方が、本当の価値観の転換を促すかどうかの決めてである。過去にも、何度となく大小の価値観の転換はなされてきた。しかし、それは大抵の場合、生活の向上、消費の拡大に繋がり、一見人類の物質的豊かさの拡大とともに幸せもやってくるように思える事柄であった。
  高度経済成長、消費は美徳、三種の神器、などなど消費をあおり豊かさを謳歌する価値観の転換。だが、今度の価値観の転換は、逆方向への価値観の転換である。勿論価値観の転換であるから転換が出来れば消費を抑える方向でも幸せの量は変わらない、いや、寧ろ拡大すると確信しているが、転換の際の抵抗は今まで以上に大きいと思わざるを得ない。それは消費の面ではあたかも我慢する事を余儀なくされるように思えるからである。100円で買ったものの悦びの量を1として、200円で手に入れたものの悦びが3倍あるということは十分にありうることであり、しかも、永く愛せた時間的悦びの長さを計算に入れれば、悦びの量は5倍にも6倍にもなる可能性がある。価値観の転換とはそういったことである。
 そうは言っても、この価値観の転換だけは商業主義の強制力では決して実現できない。骨董屋がそんなに急激に増えた事はないように、永く愛されてきたものこそ価値があるという考え方はあることはあっても、これまでは趣味の範囲でしかなかった。こんどの価値の転換だけは、商業主義にのらない形でスタートを切らないとなかなか動き出さない可能性が高い。したがって、この価値観の転換運動の先陣を切るのは、飽くまでも商業主義に載らない非営利の活動が主体にならなくてはならないであろう。消費を抑える運動、一見不買運動のように見えるかもしれないが、良いものを永く使う運動であり、いずれは理解してもらえると思う。この呼び水の役目を果たすのがNPOではないかと考えている。消費を抑えて悦びの絶対量をふやす、この難しいテーマをこなせるのは非営利活動を志すNPOしかいないと思っている。この本の目的も研究会の目的も全くこの事を目的として活動してきた。
   産業界への何の気兼ねもなく、消費者への何のおもねりもない。多くの街づくりNPOも快くはせ参じてくれるものと確信している。歴史を重ねた永く愛されてきたものほど価値がある、その歴史を作ってきたのが家族であればなおさらの事である。世代を繋ぐ価値観、地域を繋ぐ価値観、命を繋ぐ価値観、これは終わりのない連携活動である。