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環境税について考える

 いよいよ地球温暖化防止条約(京都議定書)が、ロシアの条約批准で来年2月に発効する見通しとなった。これで条約批准国は正式に温室効果ガスの削減を迫られることになる。この削減対策の目玉として環境省は、環境税の導入を2005年をめどに目指している。この環境省の案についてさまざまな分野からの意見が出始めている。筆者は環境問題のエキスパートではないし税についての深い知識も無いが、一納税者としての意見なら若干述べられると思う。

 新聞やマスコミで報じられるところによると環境省の現在の案は、石油や石炭などの化石燃料に税金をかける方式であるという。これによって、税の負担を避ける為の需要抑制効果があるとの事である。そして課税された税を省エネ対策に充てれば両方の効果で4%温室効果ガスの削減が可能になるという。削減目標は現時点の総排出量のおよそ13%というから、それでもまだ十分ではない。後の幾分かは発展途上国との排出権取引も考慮に入れなければならないという。いわゆる金で解決するやり方である。そのことは、ある意味で南北問題の一つの解決方法であるから、あえて反対はしないが、問題は環境に対する根本的な考え方である。それと税金の取り方の問題である。

 そもそも環境税が取りざたされる直接の引き金は、京都議定書にあることは間違いないであろう。しかし京都議定書の背景にあるのは、進行する地球温暖化をはじめとする環境破壊を、何とか食い止めたいという切なる願いが根底にあるはずである。せっかく環境問題を取り上げ、国民の認識も高めたいという意図があるなら、この際、環境税は単に地球温暖化対策のみでなく、総合的な環境対策に寄与できるものにしていく為に強力な手段としなければならないと考える。温室効果ガスの排出量削減の為だけなら化石燃料だけに絞って課税するのもよいが、それでは環境問題のその他の分野が忘れられてしまっている。国民は、環境税を払っているから環境問題には関心と行動を起こしているとして、かえって関心を薄れさせる恐れもある。

 言うまでもないが、環境問題は実にさまざまな分野に複雑多岐にわたっている。例えば無駄な公共事業があるとすれば、それは最大級の環境破壊である。この問題は後述するが、もう一つの問題は税の集め方の問題である。化石燃料に課税するというが、現在でもこの分野にはさまざまな税が既にかけられている。言うなれば取りやすい分野である。しかも、課税される環境税は一世帯あたり年間で3000円程度であるという。一ヵ月250円程度である。間接税であるので、実際は国民に痛みを与えているのであるが、国民には実際の痛みを感じさせないやり方としか言いようが無い。まさに、取りやすいところから取るというやり方である。国民は最初は意識するが、そのうち気にしなくなってしまう。環境税の最大の目的は、国民の意識を変えることにあると筆者は考えている。その最大の目的を放棄しているとしか言い様が無い。

 次の問題点は、税の使い方の問題である。見込まれる税収は約5千億円で、その内、約7割を省エネ機器の開発や太陽光発電の促進等に充てるという。その他森林による炭酸ガスの吸収を図るとかの施策が考えられている。これらすべてに文句をつける気は無いが、先ほども言ったように温室効果ガスの排出にダイレクトに結びついたものばかりである。間接的に効果のある、無駄な消費に対する抑制効果を考えた施策が考えられていない。それに環境税は基本的に一般財源に入れられるという。それが事実だとすると、現在は目的をいろいろ決めているようだが、いよいよ財政が逼迫してきたら、環境改善のために確保され続けられるかどうかも危ぶまれるところだ。よく考えてみると消費税の上乗せと変わらないことになりかねない。ここはがんばって目的税化しておく必要がある。国民の認識の為にも必要である。

 さて、この地球環境時代に筆者は環境税は必須のものと考える。しかし、先ほども述べたように、環境税を導入するなら本当に環境改善に寄与するものとして、強い力で機能するものにしなくてはならない。環境税の第一の目的は国民の意識転換である。第二は実際の税の効果である。第一の目的の為には国民がはっきりと痛みを感じるようにしなければならない。目的税として税の目的をはっきり知らしめる必要がある。第二の税の効果の点では、環境悪化の原因となっている分野を的確に狙い撃ちにすべきである。建設分野で言うならば建設廃材にもっと費用分担が掛かるようにするとかである。そもそも、環境対策の第一はリデュース(減らす)することである。廃材を減らす前に無駄なものを造らないことである。そして造ったら永く使うことである。この減らすことにつながるような税の掛け方を工夫しなくてはならない。

 例えば永く使っている建物の固定資産税を減免するとか、短期に壊す建物の廃材には特別課税をするとかである。何と言っても永く使い続けることにメリットを感じるような税制にすることである。エネルギー多消費型の商品を狙い打ちにした課税体系にしなければならない。昔の物品税のように、これはエネルギー多消費型の商品ですということが分るように税をかけることである。季節はずれの果物や、日常生活に必ずしも必要のない贅沢品などには環境税をかければ良い。その他相続税でも永く使い続けられるような税制が必要である。その様な税制の為の財源に新しい環境税を使うことも考えていくべきである。

 最初にお断りしたように筆者は税の専門家ではないので、これの意見は納税者の立場からの希望であって、実現にはさまざまな問題があることは十分に理解はしているが、現在の環境省の案ではせっかくの環境税が台無しになりかねないと危惧している。